「生誕300年記念 若冲展」2016.4.22-5.24【東京都美術館】
展示室の円形の空間に足を踏み入れると、何とも言えない気持ちに包まれた。それは、これまで感じたことのない心地。
「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅。全33幅の作品は、若冲が、両親と亡くなってしまった末弟、そして自身の永代供養を願って京都・相国寺に寄進したものだ。33幅が一挙公開された東京都立美術館。「釈迦三尊像」(相国寺所蔵)を正面に、「動植綵絵」(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)に囲まれた空間は、まるで自然の世界のよう。
生きとし生けるものを描ききるという、若冲の強い想いを感じる花鳥画は、「山川草木悉皆仏性」を表したと言われる。だが、それは信仰心だけで描かれたわけではないはずだ。
庭に数十羽の鶏を放ち数年にわたって観察とデッサンを重ねた若冲。市場で雀が売られているのを見て、焼き鳥にされるのを哀れに思い全部買って放したというエピソードも。自然への大きな畏敬、動植物を愛おしむ深くあたたかな心、細胞まで描いてやろうかというほどの科学者のごとき野心的な目、10年もの歳月を費やす修行心。命の美しさと儚さ。若冲が全身全霊をかけたのは、すばらしい作品への欲ではなく、真理の探求だったのではないだろうか。
「千載具眼の徒を俟つ」(千年後に自分の絵を理解してくれる人を待つ)という、若冲の言葉。今はわからなくても千年後にわかることは、いったい何なのだろう。色彩を鮮やかにする「裏彩色」、世界に先んじた「光の表現」、もはや肉眼では判別できないほどの「究極の精緻さ」、下書きも輪郭も描かない「驚異の筆使い」。すべてが驚きだが、決してそれらではないはず。
彼が、命が消えても伝えることができると確信したもの。それは今、300年後の人々の目を通して、限りある命をもつ心に確かに映っている。そして、それは千年後もきっと繰り返されるのだ。
******************
東京都美術館
東京都台東区上野公園8-36
http://www.tobikan.jp
******************