オオカンザクラが迎えてくれる牧野富太郎の庭。練馬区立牧野記念庭園

<2018年3月20日の投稿を再掲>

道行く人々が次々と足を止めて、上を眺める。

車さえも速度を緩めてその前を通るのは、大泉学園駅近くにある牧野記念庭園。正門の上で3月に咲き誇るのは、オオカンザクラの花だ。

ここは、“日本の植物学の父”と称される牧野富太郎博士が、94歳で生涯を閉じるまで30年間暮らした場所。牧野博士がこの地に居を構えた頃は、まだ現在の大泉学園駅(当時は東大泉駅)ができたばかりで、武蔵野の面影を感じさせる自然豊かな場所であったこの地に、博士を訪ねて様々な方が訪れたのだという。

決して大きくはないけれど、牧野博士自らが探し求めた草木類を植栽し、“我が植物園”と呼んだ庭。それを整備して無料で公開している牧野記念庭園の正門を入ると、日本で初めて新種の学名を付けた「ヤマトグサ」の小さな鉢があった。訪れた時には、まだ小さな芽であったが、花期は4月5月頃のようなので、これからその可憐な姿を見ることができそう。

季節ごとに植物の見頃が変わるこの庭園では、高知市の仙台屋の前にあったことから命名されたヤマザクラの「センダイヤ」や、妻の名を冠したという「スエコザサ」にも出会うことができる。3月には、カンヒザクラやオトメツバキの花も美しく咲いていた。

敷地内には書斎&書庫もあり、記念館では、資料展「元気なシニア牧野富太郎 ―大泉での研究生活―」(2018.2.3~3.31)を開催中。

子供の頃から独学で植物を学び、なんと約1600以上の日本の未知の植物に学名を付け、記載したという牧野博士。自らの足で全国を歩いて調査し続けた牧野博士の足跡は、植物図を描く際に使われた画材や物差しなどを目にすることで、より現実感を持つ。

武蔵野の名残りとともに、今も地元の人々に親しまれる長閑な場所。大きな植物園とはまた違った魅力が詰まった、小さくて貴重な庭園&記念館だ。

絵葉書セット<服部雪斎筆 牧野富太郎植物画コレクション>

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練馬区立牧野記念庭園
東京都練馬区東大泉6-34-4
http://www.makinoteien.jp
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