人類の「創る」という神秘。映画「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」

<2016年2月15日の投稿を再掲>

何のために創造するのか―。サグラダ・ファミリアは、スペインのバルセロナで、130年以上の時をかけ、今もなお創造され続けている。2005年には、ユネスコの世界文化遺産に「ガウディの作品群」の1つとして登録された。

そして、かつて完成までに300年かかると言われていたサグラダ・ファミリアは、2026年に完成予定と発表された。映画「創造と神秘のサグラダ・ファミリア」は、建築家や彫刻家、模型修復担当、ステンドグラスアーティスト、都市プランナー、美術史・宗教学者、聖職者など、ガウディを知る人物へのインタビューによって構成されるドキュメンタリーだ。

建築家・アントニ・ガウディの構想を追い求め、また、神の意思に心を傾けながら、この現場で協力し創造の作業を行っているのは、異なる国籍や文化、宗教を背景にもつ人々。1978年からサグラダ・ファミリアの彫刻家に就任した外尾悦郎は、「ガウディの視線を追ってみよう」とカトリックに改宗し、ガウディが手掛けた『生誕のファサード』を完成させた。また、現場監督・ジャウマ・トーレギタルは「大切なのはガウディの“言葉”を解くマジック」「自分たちの名前は残らなくても、このプロジェクトに関われることだけで誇らしさでいっぱい」と語る。

第一次世界大戦による資金不足、ガウディ逝去、スペイン内戦、図面や模型の喪失、芸術家や知識人による工事中止運動など、この壮大な教会の建築には、これまでも多くの困難が立ちはだかった。それらを乗り越え現在では、世界文化遺産登録により観光客は年間300万人にもおよび資金も確保できているし、ローマ法王によって正式に教会と認定された。だが、今もなお、地下鉄トンネル工事や正面の広場予定地の住宅など、解決しなければならない問題があるのだという。

人々は、時代と困難を乗り越えてまで、なぜサグラダ・ファミリアを造るのだろう。建築家・アントニ・ガウディは、カタルーニャ人であることを誇りに思っていたのだという。スペインとは言語も文化も異なる、自然豊かなカタルーニャ。構造は自然に学ばなければならないというガウディの想いのとおり、サグラダ・ファミリア内部の美しい柱は、枝が伸びる木々のように建ち、光が木漏れ日のように差し込む。

「世の中に新しい創造などない、あるのはただ発見である」ガウディが、自分が亡くなっても、後世の人が完成させてくれると信じることができた理由。たった数十年の人間の生命をはるかに超えて受け継がれる、人類への信頼。

「神は急いでおられない、急がなくていい」―世界で唯一、完成が待たれない建造物。人類は、創ることの神秘に気づいてしまったのだ。

映画『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』公式サイト
http://www.uplink.co.jp/sagrada/