「花鳥風月 水の情景・月の風景」2024.9.10.~10.20【皇居三の丸尚蔵館】
「尚蔵(しょうぞう)」とは、古代律令制の蔵司(くらのつかさ)の長官(くらのかみ)をさし、大切に保管するという意味を持つという。
平成元(1989)年に上皇陛下と香淳皇后によって皇室に代々受け継がれた美術品が国に寄贈されたことを機に、その保存と研究、公開を目的として、平成5年11月に皇居東御苑内に開館した三の丸尚蔵館。約9800点にのぼる収蔵品は、書、絵画、工芸品をはじめ、さまざまな分野にわたる。
三の丸尚蔵館は《粘葉本和漢朗詠集》(伝藤原行成 平安時代)や国宝《春日権現験記絵》(高階隆兼 鎌倉時代)、国宝《唐獅子図屏風》(狩野永徳 桃山時代)、国宝《動植綵絵》(伊藤若冲 江戸時代)をはじめ、多くの優れた出来栄えの作品を所蔵していることで知られ、これまでもテーマごとに貴重な収蔵品に会える展覧会を開催してきた。
同館は令和5(2023)年11月3日、名称も新たに「皇居三の丸尚蔵館」として開館。無料だった入館料は1000円となり、より広く洗練されたミュージアムとして、国内外からの来館者に対応する施設としてリニューアルオープン。まずは展示室のあるⅠ期棟の運営が開始された。
開催中の「花鳥風月 水の情景・月の風景」では、優れた工芸・絵画・書の中に人々が愛でてきた自然の風景を見ることができる。
水の情景には、雨上がりの虹の空気感や滝を前にしたときの温度の変化や清々しさに触れた心地がし、月の風景の作品を前にすると、清かな月を見上げるいにしえ人の姿がすぐそばにあるようだ。
また、かつては床の間に掛けられたであろう軸装された日本画は、圧倒されるほどの大きさだ。椅子が置かれた展示室では、軸を前にゆったりとした時間と空間を楽しむことができる。
旧江戸城の三の丸の地に建てられた皇居三の丸尚蔵館は、大手門を入門するとすぐに見えてくる。現在はまだ、令和8(2026)年度の全館開館を目指して新築工事(Ⅱ期)が行われているが、Ⅱ期棟には休憩所や売店、多言語に対応した解説スペースに加えて、皇居初となるカフェもオープン予定とのことなので、完成が待ち遠しい。
大手門は、かつては諸大名や旗本の登城口であった門でもある。手前の高麗門は明暦の大火後の万治2(1659)年に再建されたもので、奥の渡櫓門は昭和41(1966)年に復元されたものだ。
歴史ある門をくぐって、皇居三の丸尚蔵館を訪れたら、一般公開されている皇居東御苑を散策するのもよさそうだ。
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皇居三の丸尚蔵館
東京都千代田区千代田1-8(皇居東御苑内)
https://shozokan.nich.go.jp
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