山種美術館が贈る特別展「奥村土牛―画業ひとすじ100年のあゆみ―」

開館50周年記念特別展「奥村土牛―画業ひとすじ100年のあゆみ―」2016.3.19-5.22【山種美術館】

山種1376

何度も何度も見つめ、写生をする。そのひたむきさが、作品から伝わってくる。
30代で描いた「胡瓜畑」の瑞々しさに魅かれた。そして、この瑞々しいと感じた感覚は、年齢を重ねてさらに研ぎ澄まされていく。山種美術館の「奥村土牛―画業ひとすじ100年のあゆみ―」展には、まるで人柄を表すかのような、奥村土牛の作品約60点がずらり。

やさしい視線でとらえる動物の動き、揺れ動く船の上で写生した鳴門のうず。80歳を超えてもなお「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語ったという土牛。

その画業に触れ、90代の作品である「海」の前では、なぜか涙が溢れる思いがした。作者の感じた思い。そのことが、理屈ではなく、ただわかる。プラチナ箔の上に描かれた海に、その人生を見るようだった。

「芸術に完成はあり得ない。要はどこまで大きく未完成で終わるかである」と自書『牛のあゆみ』で語った奥村土牛氏。美術館の設立者・山崎種二氏との交流やその“あゆみ”までも感じさせてくれる貴重な展覧会だ。

******************
山種美術館
東京都渋谷区広尾3-12-36
http://www.yamatane-museum.jp/
******************