【見逃しシネマ】制作過程を捉えた貴重な映像「ミステリアス・ピカソ―天才の秘密」

映画「ミステリアス・ピカソ―天才の秘密」(1956年 フランス)

晩年には自らが被写体になることも多かった20世紀の巨匠・パブロ・ピカソ。そんな彼だからこそ残すことができた映像なのだろう。カンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞した本作は、難解とも言われる画家の制作過程に迫るドキュメンタリー映画だ。

ドキュメンタリーと言っても、作家の人となりや日常を記録したものではない。その内容は、作品の制作のみ。描く線の動きを捉えた映像は、ピカソの作品がどのようにできあがっていくのかを見せてくれる。フィルム全盛の1950年代に、これはどのようにして撮影したのだろう。そう思っていると、その撮影風景が映し出され、その手法に納得する。

本作には、これまで難解に感じられたピカソの作品を知る楽しみもある。ピカソ本人の制作過程を目の当たりにすることで、作品に何か描かれていたのかがわかるのだ。映画の後半、刻々と変わっていく作品を見ながら、「え~!?」という声が何度か出る。その制作過程において予想をはるかに超越してくる、これぞピカソか。

“絵の下に隠れているもの”を見せる、ピカソ自身がそう提案することで実現した、貴重な記録。 次にピカソの作品を観るときには、きっと違った見方ができるはず。

******************
映画「ミステリアス・ピカソ―天才の秘密」
監督:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
******************