《連載》メトロポリタン美術館の日本美術❸ 尾形光琳〈八橋図屏風〉

八橋図屏風 Irises at Yatsuhashi (Eight Bridges)
尾形光琳(おがたこうりん)Ogata Kōrin Japanese
江戸時代18世紀 after 1709


六曲一双の屏風を斜めに横切る橋。橋を背景にすくっと垂直に立ち上がる、風格のある燕子花(かきつばた)。メトロポリタン美術館のサイトは、伊勢物語の東下りの段とともに本作品を紹介している。

京から追放された主人公(昔男)が、燕子花の名所である三河国の八橋に立ち寄り、妻を想って歌を詠む場面。ここでは、八橋について、小川が8つの水路に分岐し、それぞれに橋が架けられていたことを説明している。

尾形光琳《八橋図屏風》(メトロポリタン美術館所蔵)

唐衣/Karagoromo
着つつなれにし/kitsutsu narenishi
つましあれば/tsuma shi areba
はるばる来ぬる/harubaru kinuru
旅をしぞ思ふ/tabi o shi zo omou


国宝「燕子花図屏風」と同じテーマ

日本の国宝に指定されている〈燕子花図屏風〉(根津美術館)とメトロポリタン美術館所蔵の〈八橋図屏風〉。共に尾形光琳の作品であり、同じテーマで描かれたもの。〈燕子花図屏風〉制作後10数年の時を経て描かれたのが〈八橋図屏風〉だ。

光琳があえて橋を描いた〈八橋図屏風〉。本作は、襖ではなく屏風だ。実際に目にする際には、屏風の形を活かすことで感じられる画面の奥行きに注目したい。