膨大な資料からその眼差しを辿る 「永遠のソールライター」Bunkamuraザ・ミュージアム

「ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター」2020.1.9~3.8【Bunkamuraザ・ミュージアム】


2017年に開催された日本初の回顧展で出会ったソール・ライターに、また会える――。
ソール・ライター (1923―2013) が遺した膨大な資料から、その眼差しを辿る。これは、写真家の仕事場に足を踏み入れたような展覧会だ。

前回とは異なる内容で、2017年にソール・ライターの展覧会を観た人も十分に楽しめる構成。スライドを観るように展開するコーナーでは、まるで彼と一緒にニューヨークのイースト・ヴィレッジを散歩しているような気持ちになり、豊富な資料からは、また彼の新たな一面を知る。ソール・ライターの展覧会は、作品を観ると同時に、写真を撮る視線に触れる体験が刺激的でもあるのだ。

今回興味深く観たのは、作品とは別に、彼が偏愛し「スニペット」と呼んだという名刺大の写真たちだ。画面の中の決して視線が合わない人や、街の一瞬を捉えた作品とは対照的に、スニペットの中の人物はそのほとんどがこちらを向いて魅力的な表情をしている。自分だけの宝物として、大切に保管しておきたい写真。誰かに見せるための作品の構成物ではなく、自分が何度も見たいと思う表情がそこにはあって、それは、写真家の表面と内側の2つの顔を見るようでもある。

日常を撮影する彼の眼は優しく、観る者をどこか切ない気持ちにさせる。名も知らぬ人、一瞬の出来事。いつもの街の風景が、こんなにも愛おしいということをソール・ライターは教えてくれる。

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Bunkamuraザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter
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<巡回展>
2020.4.11~5.10【 美術館「えき」KYOTO 】
http://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2005.html