「着想のマエストロ 乾山見参!」がサントリー美術館で開催されている(2015.5.27〜7.20)。
京の乾の方向の鳴滝にあることから、窯の名は「乾山(けんざん)」。尾形乾山が、文学や絵画など、ありとあらゆるものから着想を受け、まずは真似てみる様子。師に倣い、兄・尾形光琳とコラボし、さらには、試行錯誤を重ねて、確固たる「乾山様式」が生み出されていくさまに出会う。
派手な兄・光琳とは、対照的な乾山。しかし、彼の作品には、京都の裕福な呉服商・雁金屋(かりがねや)の生まれの影響もあったように思う。光琳が着物の型染めの技法を屏風に取り入れていることを思い出させる、芸術であり、工芸である。そのとちらが上とも感じさせない作品。これらの当時の文化人好みを読み取ることができるのは、美を扱う呉服商の感覚を生かした消費者目線の表れであるように感じられた。
展示室を出て、どこか満足できず、乾山はモノマネ工芸師なのか、との印象を持ったまま出口と思われる方向へと歩くと、「階段を下って展示室2へどうぞ」と案内された。「え!?」展示の充実ぶりに驚きながら、素敵な階段を下った。そこにあったものが、乾山の真骨頂だった。
第4章 「蓋物の宇宙ーうつわの中の異世界ー」。器であることと、芸術であることが見事に結実した「蓋物」。「白泥染付金 彩芒文蓋物」の芒(すすき)はもっと金色であったようだが、修復しすぎない日本らしさも味わい深く、「銹絵染付金銀白彩松波文蓋物」の外側と内側で、松風や砂浜を想起させる風情に魅了された。
第5章では、乾山窯は、鳴滝から二条丁子屋町へ。「色絵竜田川文透彫反鉢」を覗き込むと、紅葉の名所・竜田川の流れと紅葉が浮かび上がる。「うつわ」からも解放され、独自の領域に。
実は、本展で一番驚いたのは、ポスターやチラシのデザインかもしれない。美術館の入り口に、展覧会名とともに堂々と飾られている写真は、独特なデザインの「色絵桔梗文盃台」。それを底から撮影したものだった。切り抜かれたような桔梗の斬新な姿の裏に描かれたモダンな文様と、後世に受け継がれた「乾山」の名。この盃台の実物の姿を見た後にポスターを見ると、衝撃が大きい。まさに発想の転換。
2007年に赤坂から六本木に移転した、本美術館の建築の構想は「都市の居間」なのだそう。入り口からは想像できないが、日本の障子をイメージさせる空間は、美しい吹き抜けもあって、ゆったりしている。そして、美術館のコンセプトは「生活の中の美」とのこと。東京ミッドタウン内のカフェやレストランでひとときを過ごした後、この小皿を使ったら、きっと素敵なのでしょうね!などと思いながら見るのもいい。
