蒐集家の眼こそが、コレクション。三菱一号館美術館の「全員巨匠!フィリップス・コレクション展」

「全員巨匠!フィリップス・コレクション展   THE PHILLIPS COLLECTION   A MODERN VISION」2018.10.17~2019.2.11【三菱一号館美術館】

 

作品には、優れた作者だけでなく、それを見出す人物が必要だ。

ワシントンD.C.にある「フィリップス・コレクション」の近代美術コレクションが、三菱一号館美術館にやってきた。本展には、“全員巨匠”の言葉どおり、ゴヤ、ドガ、モネ、セザンヌ、ゴッホ、ブラック、ピカソ、クレー、ジャコメッティ…と、美術史に名を残す作家がずらり。そればかりではない。コレクションには、彼らの質の高い挑戦を敬愛するかのような蒐集家としての在り方と、「作家の作家らしさ」を伝える作品を選び抜く審美眼が見え隠れする。

展覧会の構成は、なんと収蔵年代順。蒐集家ダンカン・フィリップス(1886-1966)が、何を想い、何を求めて蒐集を行ったのか。年代をたどり、その変化までも体感しながら展示は進む。1点の作品をコレクションに加えるためには、他の作品を手放すこともあったというが、取捨選択され、最後に残った“エッセンス”のようなコレクションは、もはやそれ自体が1つの作品なのかもしれない。展示室の一角に添えられているフィリップスの言葉にも、美術史の潮流の中にそれぞれの作家の意味を見出し、時には芸術家たちの支援もした、蒐集家としての矜持が見える。

貴族や資産家によるコレクションは世界中にあるだろう。個人のコレクションが美術館になっていることも多い。だが、これまで作品の美しさやその豊富さに感動することはあっても、蒐集そのものに感動したことはなかった。蒐集家の仕事と、その眼を、新鮮な感動をもって知ることができる展覧会になっている。

******************
三菱一号館美術館
東京都千代田区丸の内2-6-2
http://mimt.jp
******************