雄大な自然の中にある生活。「ロマンティック・ロシア」Bunkamuraザ・ミュージアム

Bunkamura 30周年記念「国立トレチャコフ美術館所蔵  ロマンティック・ロシア」
2018.11.23~2019.1.27【Bunkamuraザ・ミュージアム】

ロシア・モスクワにある国立トレチャコフ美術館は、創設者パーヴェル・トレチャコフが自宅の庭のギャラリーでコレクションを公開したことに始まるという。人々に開かれた公共美術館を目指したこととともに、注目すべきは、“ロシアの芸術家による、ロシア美術の美術館”であるということかもしれない。

広大な大地、自然が織りなす光、手が届かないほど高い木々から大地に生える草花まで、ただそのままの美しさ。まるで風景画のように、自然が大きく、人は小さく描かれている様子にも、大地に根差した美であることを感じる。

触れる機会もそう多くはないロシア美術だが、雲や森にも自然への畏敬が垣間見えるイワン・シーシキンの《正午、モスクワ郊外》や《松林の朝》。女性の独特の存在感に魅せられるイワン・クラムスコイの《忘れえぬ女(ひと)》や《月明かりの夜》など、印象に残る作品も多い。

大画面の《月明りの夜》の作品の前にある椅子に腰掛けると、その幻想的な雰囲気に包まれて、しばし時間を忘れてしまいそうになる。深い森の闇の中、足元には白い睡蓮の水辺。月光に愛されているかのようにそこだけが明るく照らされた美しい女性と、その手足の絶妙な動作。魔法にかかったような気分になる作品だ。

本展を紐解くキーワードの1つに「移動派」がある。19世紀後半、アカデミズムの制約を嫌い、民衆の生活や郷土の自然を描いて、まさに移動しながら展覧会を行ったという移動派の画家たち。感覚的に楽しむことができる“ロマンティック”なロシアに出会い、その対極にある存在にあらためて気付くこともあるだろう。

2019年に30周年を迎えるというBunkamuraが、改修休館を経てオープン。記念企画の1つとして開催されているのが、この「ロマンティック・ロシア」だ。信仰やアカデミックに対して、自然やロマンティックがあるなら、そのロマンティックという括りで見せてくれる一面が、どこか新鮮な印象をもたらしている。

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Bumkamura ザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_russia/
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