ピエール・アレシンスキー展【Bunkamura ザ・ミュージアム】2016.10.19−12.8
作品を前にすると、“腑に落ちる”心持ちがする。
それは体感するしかない。彼が手紙や地図の上にも作品を描いたように、言語や理論も超えるかのような、文字さえも感覚的に捉える作品。言葉ではパーフェクトに表現できないことが、かえって喜ばしく感じられる展覧会だ。
ベルギーの現代美術作家・ピエール・アレシンスキー(1927-)の作品は、プリミティブでありながら現代的。90歳近い作家のそのエネルギーに圧倒される。日本の書やアメリカのコミックにも影響を受けたという表現は、身体と強く結びついている。
左利きを矯正された彼は、その左手で「絵を描くこと」はゆるされていたのだという。彼の作品を前に「絵を描くこと」と「身体」と「自然」のつながりを実感する所以を知るようなエピソードだ。
他にも、身体と筆が一体となった日本の書道の姿を見て、帰国後にキャンバスや紙を床に置いて描くようになったということや、日本でもらった筆を現在も大切に使っていることなど。日本人だからこそ気付かない、日本独自のプリミティブな感覚に触れる思いもする。
日本・ベルギー友好150周年を記念して開催される本展覧会は、国内初の回顧展でありながら、「帰りにベルギービールでもいただきましょうか」と言いたくなるような、ポップな軽やかさも魅力的だ。
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Bunkamura ザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/16_alechinsky/
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