ジョルジュ・ルオー展 内なる光を求めて 〜 どこか懐かしささえ感じるルオーの深遠なる風景画、出光美術館

「ジョルジュ・ルオー展 内なる光を求めて」2015.10.24 – 12.24【出光美術館】

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こんなにも多くのルオーの作品に触れたのは、はじめてだ。ジョルジュ・ルオーは、20世紀を代表するフランスの画家。敬虔なカトリック信者として、キリスト教画ともいえる作品を数多く残している。特に顔のみが描かれたキリスト像は印象的で、今回、キリスト像にもそれぞれ表情の違いを見ることができた。

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初期の作品は、宗教画ではなく、「道化師」や「娼婦」をはじめ様々な職業の人々を描いている。人々の苦しみに寄り添い、上流階級の欺瞞や傲りを心から憎み、市井の人々の表情を奥深く描く画家の姿がそこにある。

その後のルオーの宗教画に、人々の奥深い心情を見るのは、人々に寄り添うという軸がずっと変わらずにあるからなのかもしれない。展覧会の作品群に触れていくほどに、道化師像の中にどこか神々しさを見たり、キリスト像の中に人々に注ぐ眼差しを感じるようになるのが不思議だった。

キリスト教を信仰する方には、もしかしたら異なる思いがあるかもしれない。だが、ルオーの作品には、信仰を超えて、なお作品に宿るものがあることを実感することができるはずだ。苦悩、慈しみ、優しさ、悲しみ、神々しさ、人間の奥深い場所に触れる、ルオーの目。その眼差しの先は、人にそして神に向けられている。

この「ジョルジュ・ルオー展」で見ることができる、連作《受難》のコレクションが凄い。そして、晩年、ルオーが到達した「風景画」にも心を奪われるはずだ。盛り上がった絵の具、温かみのある色。聖書の風景であるはずなのに、それは、どこか懐かしさを感じる風景画。この風景は、人の心の中にあるのだろうか。そんな思いを強くした。

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出光美術館
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