MOMATコレクション 特集 藤田嗣治、全所蔵作品展示。〜どんなときも一画家であり続けた男

「MOMATコレクション 特集 藤田嗣治、全所蔵作品展示。」2015.9.19-12.13【東京国立近代美術館】

藤田嗣治展示室前0893

「おかっぱ頭」「猫」「美しい女性画」独特の存在感を放つ画家・藤田嗣治。MOMAT所蔵作品25点および特別出品1点に出会える貴重な企画展が、東京国立近代美術館で開催されている。乳白色の美しい女性を描きパリ画壇で成功をおさめた藤田嗣治。時代を追って展示される作品に、その複雑な生涯を見るようだ。

展示室に入ってすぐ、背景の柄も美しい《タピスリーの裸婦》とともに、ひときわ大きな作品《五人の裸婦》に出会う。触れたくなるほど白く美しい肌。5人の女性はそれぞれ「布を持つ=触覚」「耳を触る=聴覚」「口を指す=味覚」「犬を伴う=嗅覚」を表し、中央の女性が「視覚」である、とも言われるそう。日本画を思わせる白色と繊細な線、東洋的な表現を感じることができる。

藤田メイン1527小

パリの売れっ子画家となった藤田だが、新たな表現を追求して中南米へと旅をしている。海外からの視点で日本を見る藤田。だが、時は第二次世界大戦へ。新たな題材として戦争画に出会うこととなる。日本の従軍画家として活躍し、戦中の日本で評価された。父は陸軍軍医総監まで務めていた人物であることを思えば、「絵筆で戦時貢献すべし」との軍部の協力要請に従うこともやむなきこととも思われるが、戦後、日本画壇から戦争責任を問われ糾弾され、パリに移住。フランスに帰化した。

《十二月八日の真珠湾》など、巨大なキャンバスに描かれた戦争画がずらり。そして、作品を掲載した戦意高揚を狙う新聞記事。加えて、本企画展では《ソロモン海域に於ける米兵の末路》《アッツ島玉砕》《血戦ガダルカナル》とレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロなどのヨーロッパ絵画との構図の一致など、新たな視点を提示しているのが興味深い。戦争の情景そのものを描くのではなく、ヨーロッパの美術に系統する戦争画として、人間を描いていたのだ。

戦後、フランスで描かれた残忍な本性を現す擬人動物画に、複雑な思いを感じざるを得ない。そして、絵のテーマは、子供たちや宗教画へ。

映画「FOUJITA」の公開を控え、決して翻弄されるのではなく時代とともに積極的に生きた藤田嗣治に出会うことができる展覧会。

国立近代美術館外観0888

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東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3-1
http://www.momat.go.jp