未来への遺産 写真報道の理念に捧ぐ〜清里フォトアートミュージアムで知る6人の写真家〜

「K*MoPA開館20周年記念展 未来への遺産 ~写真報道の理念に捧ぐ~」2015.7.1~9.30【清里フォトアートミュージアム】

K*MoPA外観1075

清里の牧場通りから看板のとおりに車を走らせ、木漏れ日が揺れる林を抜けると、清里フォトアートミュージアムがある。

KMoPA展示室0583

胸を射抜く力強さ。これは「報道写真」ではなく「写真報道」なのだそう。展示の冒頭には「撮影対象が、戦争であれ、自然であれ、日常生活であれ、写真家自身が、人間が生きることの真価を強く表現した写真を撮ること。それを、私たちは写真報道の理念と表現しました」とある。

展示室に入ると、まずは「アンドレ・ケルテス」の作品。感覚の研ぎ澄まされた彼の作品には、芸術と報道が同時に存在している。その1枚1枚の作品の前で、我々の心は揺れるのだ。写真のキャプションには、本人が残した言葉が添えられている。「いつ」「どこ」…この2つのことがとても大切だと知るのは、この写真が、今もまさに流れ続ける時間の中に起こった一瞬の出来事であり、間違いなく事実であるからだ。

本展は、写真というものの力を信じる6人の写真家の競演。「アンドレ・ケルテス」「デイヴィッド・シーモア」「ロバート・キャパ」「ワーナー・ビショフ」「ダン・ワイナー」「レナード・フリード」それぞれの個性や特徴の違いも大変興味深い。

写真家に詳しくはない私でも、名前を知っていたのは、ロバート・キャパ(1913-1954)だ。その作品に、戦場のまさにその場にいなければ、撮影することはできないもの。どんな言葉を尽くしても、写真以外には伝えることができないものがあることを思い知る。「身近に苦しむ人がいるのに、傍観するばかりで何もできず、ただ記録するのがとても難しい時もある…最後には、最も優れた人々の何人かが死ぬ。しかし生き残った者たちは、たちまちそれを忘れてしまう。ーロバート・キャパ(出典:パンフレット)」当時、より刺激的な写真を人々は欲した。苦しむ人々を記録し、伝え、そして、地雷を踏んで、キャパは亡くなった。

KMoPA上映0585

展示室を出るとソファやスタイリッシュな椅子があり、その前では「メキシカン・スーツケース」という映像が流れていた。キャパの暗室助手は、スペイン内戦を記録したネガの、その運命をスーツケースに託したー。2007年、そのネガが70年ぶりにがメキシコで発見されたことを伝えるドキュメンタリー。映像以外にも、館内には数多くの写真家による写真集の作品があり、それを閲覧することができる。

現在は、半世紀以上前とは状況が異なる。単に高い志のみを讃えることはできない場合もある。だが、記録すること、残すこと、伝えることが、どんなに大切であるかをこの展覧会は教えてくれる。「未来への遺産」を受け取ったのは、そうか…私だったのか。

KMoPA雲1095

帰り道には、かわいらしい野生の鹿に出会って驚いた。空にはダイナミックな雲、高原を舞う鳥の群れ。少し早めのアキアカネに癒される清里高原。八ヶ岳南麓は、実はアーティストも多く暮らす場所。自然の中に佇む、硬派美術館がここ。

KMoPA向日葵1092

********************

K*MoPA 清里フォトミュージアム
山梨県北杜市高根町清里3545-1222

TOP