NO MUSEUM,NO LIFE? 〜国立近代美術館のいっぷう変わった展示手法に戸惑う〜

「NO MUSEUM,NO LIFE これからの美術館事典 国立美術館コレクションによる展覧会」2015.6.16−9.13【東京国立近代美術館】

NMNL入り口

想像していた以上に斬新だった。惜しげもなく登場するのは、名画と称される作品の数々。その使い方に「えっ!この展示方法はいいの?」と驚いた。話題となっていたが、なかなか行くことができずに、先日やっと訪れた国立近代美術館。会期も残り20日になっていた。

NMNL藤田

 

NMNL倉庫

「美術館なんてめったに行かないよ。暗くて寒い中で絵を見て、説明を読んでると頭が痛くなっちゃうんだよね」そんな気持ちを持っている方にこそ気軽に楽しんでほしい。美術館って、こんなところなんだよ。AtoZの展示に、そんなメッセージを感じるようだった。

NMNL岸田

一方、美術館が好きで、作品そのものを堪能するというクラシックな美術館の楽しみ方をしたい方には、まったく向かない企画展となっている。《スマホを片手に、額の内側に入って自らが作品になってみる》《楽しむ!美術館》そんな「意識改革の必要性」を理解するまでに、時間がかかってしまうだろう。

NMNL裸婦

だが、国立美術館5館所蔵の作品群はすごい。脳内をアップデートした上で、もう一度訪れて、あの作品に出会いたい。そんな気持ちになるはずだ。

MOMATコレクション

そして、同時開催されている所蔵品展「MOMATコレクション 特集:誰がためにたたかう?」(2015.5.26−9.13)の迫力には圧倒された。むしろ、こちらは必見。藤田嗣治、パウル・クレー、岡本太郎…。ダイレクトに主張する作品の数々。絵の具の鮮やかさに、その時の近さと生々しさを見ることが怖くもある。

展示室には人がいるのに、皆、声を発することがない。作品そのものが発する強い力は苦しみや痛みを伴って、それを正面から感じる空間にただ佇むのみ。

MOMAT眺め

皇居の隣とも言える場所に、この東京国立近代美術館は建っている。「近代」とは何だろう、それをいつも問うかのように。美術館を出て、北の丸公園を抜けると武道館へ向かう募金の長い列に遭遇した。現代の未来と寄り添って、近代がある。美術館マニアではない人にこそ来てほしい、その理由が少しわかった気がした。

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東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3-1