時空を超えたフランス旅行。東京都美術館「プーシキン美術館展」

「プーシキン美術館展−旅するフランス風景画」2018.4.14〜7.8【東京都美術館】

 

交通の発展も著しい近代的なパリの街、明るい光に包まれる色鮮やかな南フランス、画家が旅した南の島や空想の世界――。作品たちにそれぞれの時代や土地を感じながら、旅をする。コンセプトは「旅するフランス風景画」。名作ばかりで、それを可能にするのがプーシキン美術館のコレクションだ。

ロシアのモスクワにあるプーシキン美術館。約10万点を誇るコレクションから、17世紀から20世紀のフランス絵画65点が上野にやってきた。本展では、若き日のクロード・モネが描いた《草上の昼食》(1866年)が初来日。《草上の昼食》といえば、現実の裸婦が佇む姿で批判されたマネの作品が有名だが、マネが1963年に描いたこの作品にインスパイアされて生まれたのがモネの《草上の昼食》で、そのモネから影響を受け、マネは1967年に《水浴》から《草上の昼食》へと改題したのだという。

現在、東京都美術館で観ることのできるモネの《草上の昼食》は、優美な貴族を題材にしたロココの雰囲気を感じさせる。だが、中心に描かれた人々の姿から風景に目を移すと、そこに降り注ぐ光のきらめきと木漏れ日に、印象派前夜のモネを見る。モネがサロンに出品しようとした6メートル近くもある《草上の昼食》は、自身の手によって分割されているそうなので、本作は、その全体像を知ることができる貴重な作品でもあるそう。

展示室を進むと、プーシキン美術館のコレクションの充実ぶりを実感する場面がきっと何度かあるだろう。たとえば、さりげなく展示された木立を描いた作品のラインナップは、セザンヌ、ヴラマンク、マティス、ピカソ――。その特徴を比較できるほどの有名すぎる画家たちの競演だ。

神話・聖書や歴史の一場面から、人や動物が共存する自然、そして、画家が見た一瞬のきらめき、空想の世界へ。時と場所を超えて、旅するように体感する珠玉の風景画たち。水谷豊さんによる旅の案内、場面ごとのコラム、ピアノの音など、音声ガイドも心地いい展覧会となっている。

 

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東京都美術館
東京都台東区上野公園8-36
http://www.tobikan.jp
http://pushkin2018.jp
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