流派を超えた“技”に込められた絵師の矜持「ゴールドマンコレクション これぞ!暁斎」

「ゴールドマンコレクション 世界が認めたその画力 これぞ!暁斎」2017.2.23-4.16【Bunkamura ザ・ミュージアム】

展覧会の題名は「これぞ!暁斎」だが、河鍋暁斎の作品群に出会い、その巧みさに触れると“これぞ!日本画”という想いを強くする。ためらいのない軽やかな筆運びから生み出される、豊かな表情。“技の宝庫”のような表現は、土佐派、狩野派、琳派、丸山四条派、浮世絵など、時代や流派を超えて様々な日本画の技法を研究し学んだ河鍋暁斎ならではのもの。江戸から明治へという激動の時代を生き、画家ではなく“最後の絵師”と称された暁斎の矜持を感じさせる内容となっている。暁斎は、6歳で人気浮世絵師歌川国芳に入門、その後9歳で狩野派の前村洞和、狩野洞白の下で修業しわずか9年で学び終えたという技量の持ち主だ。そのためだろうか、暁斎の作品は、国芳に似た反骨的で大胆な表現を感じると同時に、日本の伝統への誇りを見るのが興味深い。

展示室には、170点を超える作品が並ぶ。まずは、「鴉(カラス)」の作品だ。第二回内国勧業博覧会で最高賞を受賞した《枯木寒鴉図》を日本橋の榮太樓總本舗が百円の高値で買い取ったというエピソードが有名な、暁斎のアイコンともいえる“鴉の絵”。その鴉が、世界を飛び回り、今日本に戻ってきたかのように、ずらりと並んでいる。

鳥獣戯画を思わせる蛙や兎、障壁画の迫力と技術をもつ虎、世俗をユニークに捉えた錦絵など、描かれる題材も多種多様。人から神仏、妖怪、幽霊まで、まさに何でもござれの暁斎の画業には、3歳で蛙を描き、9歳で神田川で拾った生首を写生した、鯉のうろこの数を数えて描いた、近所に火事があればの紙と筆を持って駆けつけた、亡くなった妻を抱き起こして描いたなど、その人となりを思わせるエピソードも事欠かない。

展示作品は、すべてが河鍋暁斎の筆であり、イギリス在住のイスラエル・ゴールドマンのコレクション。河鍋暁斎とイスラエル・ゴールドマンとの出会いは、ほんの35年前、ロンドンのオークションで《半身達磨》を55ポンドで購入したことにはじまる。それが、今や世界有数の暁斎コレクションになった。一度売ってしまったことを後悔し買い戻したという逸話を持つ《象とたぬき》などを目にし、作品や作者はそれを見出す人があってこそ、はじめて輝くのだということをあらためて感じさせてくれる展覧会になっている。

東京会場は、4月16日まで。今後は「高知県立美術館」、「美術館「えき」KYOTO」、「石川県立美術館」で順次出会うことができる。

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Bumkamura ザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_kyosai/
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